誘導
いよいよ相手を催眠の状態に導いていきます。その方法は大きく分けると次の二つです。
- 驚愕法
- 弛緩法
まず驚愕法ですが、これは相手を驚かせることによって、一瞬にして催眠状態にする方法です。
驚愕法
人間は何かに驚いた瞬間、脳内の表面意識に穴が開きます。このことは日常生活でも経験したことがあるかもしれません。
例えば、高速道路の料金所でお金を渡そうとした瞬間、目の前を人が走っていくのを見てビックリしたとします。高速道路で人は走ったりしませんから、一瞬、ドキッとするはずです。その瞬間、人はどうなるでしょう。
お金を差し出していたことなどすっかり忘れて、手を差し出した状態で体が固まってしまいませんか? 喫茶店でコーヒーを飲もうとした瞬間、窓の外を初恋の人が歩いていくのを見て、思わずハッとしてしまった。そんなとき、コーヒーカップを持ち上げていたことも忘れ、そのままの状態で体が固まってしまう。そのような驚いた瞬間に体が固まってしまう経験をしたことはあると思います。
じつは、それは驚いたことにより、表面意識に穴が開き、潜在意識がむき出しになったからに他なりません。潜在意識がむき出しになると、どんな暗示でも受けてしまうので、その瞬間に暗示を与えてやると、その通りのことになってしまいます。
じつは、それは驚いたことにより、表面意識が麻痺して、表面意識に穴があきやすくなってます。表面意識に穴が空くという事は、潜在意識がむき出しになることなので、通常はNOというようなことでも、受けいれやすくなる。その瞬間に誘導を与えてやると、その通りのことになってしまいます。
私がよく使う驚愕法を紹介しましょう。まず私の目を見てくださいと誘導します。
「私の目を見てください……これから私は、あなたの声を取ります。声を取るとどうなりますか?……そうです、話せなくなりますね……私の目を見て……私の目の中に白い点がありますね。その白い点をじっとみて……一昨日のお昼ごはん、何食べた?」
相手はここで一瞬、驚き、戸惑うはずです。「え? 一昨日のお昼ご飯、何を食べたんだっけ……?」。その瞬間にすかさず言葉を続けます。
「あなたの声が私の手の中に入りました。もうあなたは声が出ません。口は動きますが、しゃべれないのは当たり前です……お名前はなんですか?」
そうすると相手は本当に声が出なくなるので、名前を言おうとしますが言えなくなってしまいます。
これは「一昨日のお昼ご飯何食べた?」と、思いもよらない質問を投げかけられたことで相手が驚き、その瞬間に表面意識に穴が開いて、潜在意識がむき出しになったところへ、声を取られたのでしゃべれなくなったという暗示を与えたためにそうなったのです。
このとき、昨日のお昼ご飯ではなく、一昨日と言ったことも重要です。昨日のお昼ご飯ではすぐに思い出すことができるかもしれませんが、一昨日と言われると、なかなか思い出せません。二日前の出来事を尋ねられたからこそ、相手は戸惑い、驚きます。
また、「私の目を見てください」と言っておいたのも、相手に考えさせる隙を与えないためです。「私の目の中の白い点をじっと見て」と言うことで、相手はこちらの目を見つめることに集中して、余計なことを考えなくなります。そこに「一昨日のお昼ご飯」と思わぬ質問されたことで脳が混乱し、表面意識が溶けるのです。
さらに「私の目を見てください」と言ったのは、相手の目を観察するためです。人は何かを考えるとき、瞬間、瞳が上に行きます。その瞬間こそ、表面意識に穴が開いた瞬間ですので、そこを見逃さず、「あなたの声が私の手の中に入りました」と暗示を与えるわけです。
これが驚愕法です。
この方法はタイミングさせあえば、「興味」「信頼」を飛び越して催眠をかけられるという利点があります。
ただし、一瞬にして催眠にかけることができる反面、そのぶんだけ解けるのも早いという欠点があります。すぐに潜在意識が復活して、催眠状態が解けてしまうからです。
それでも私は、飲み会などで女の子に催眠をかけているとき、「催眠なんて嘘だろう」とちょっかいをかけてくる男性に対して、この方法で一瞬にして催眠をかけ、声を取ってしまうことをよくやりました。相手は目を丸くして驚きますが、女の子たちには大受けです。
続いて弛緩法についてご紹介します。