催眠術は「脳科学」、「身体学」、「言語学」、この3つを使って相手をトランス状態にして、五感と記憶を誤作動させ、こちらの意図した行動を取らせる技法です。
トランス状態については次の記事で説明します。
例えば、苦いタマネギが甘く感じるのは、味覚を誤作動させているからです。また、誰かが私のことを好きになるのは、感情を誤作動させているからです。
相手の身体機能、または五感を、こちらの意図したとおりに変換することにより、こちらの思ったとおりに動かすのが催眠術です。
少し難しそうに感じるかもしれませんが、不安に思わなくて大丈夫です。実際には、これらの知識は覚えなくても簡単に催眠術はかけることができます。
ただし、ある一定のレベルまで行くと、これらの知識を活用しないと、次のステージにいけない瞬間がきます。私もそうでした。
なので、今回の記事は「本格的に催眠術をマスターしたい!」人向けに書きました。それでは、1つ1つ細かく順を追って説明していきましょう。
「表面意識」 「潜在意識」 「深層意識」
まず、脳科学というと難しくなるので、人の脳の中の根本的な原理について話をしていきます。脳の中は3つに分けることができます。「表面意識」 「潜在意識」 「深層意識」この3つです。
表面意識(思考)理性
- 情報整理
- 情報判断
- 行動設定
- 短期記憶
表面意識は、思考や理性、考える部分です。表面意識の仕事は、情報整理、情報判断、行動設定、短期記憶です。
1分1秒、または10分でもいいですが、短い時間内で行動するときに一番多く使っている部分が表面意識だと認識してください。
潜在意識(情報)欲
- 身体感覚(五感)
- 感情
- 欲望
- 長期記憶
潜在意識は、情報が蓄積されているところです。また、人間の欲もこの部分で制御されています。
潜在意識は身体感覚をコントロールしています。目、鼻、口、耳、手の五感です。潜在意識は感情をコントロールしています。過去の情報から感情は生まれます。
例えば、好きという感情は、子どもの頃、遊園地に行って、優しいお父さんのたくましい腕にギュッとされるとうれしかった。
その記憶が潜在意識の中に情報として入り、それによって腕の太い男性が好きという感情が生まれます。人は、潜在意識の情報を使って行動のプログラミングができています。
欲望という部分もそうです。
お父さんが優しかったから、腕の太い男性としか付き合いたくないということがあります。逆に、お父さんにいじめられていたら、腕の太い男性が嫌いになることもあります。
長期記憶は昔の記憶です。
これは私の考え方で、短期記憶や長期記憶は脳科学的には別の話になりますが、あくまで催眠を説明するための考え方として、表面意識と潜在意識はこのようになっていると認識しておいてください。
深層意識(生命)
- 身体機能
- 遺伝
- 潜在記憶
深層意識は生命をつかさどる部分です。生命とは身体機能です。
身体機能とは、例えば汗や心臓の鼓動、胃の分泌量、腹痛など、自分の意識ではコントロールできない部分です。
遺伝もあります。両親の情報も深層意識の中に入っています。これは生まれる前の情報です。
潜在記憶とは、前世や退行など、スピリチュアルな部分になります。これは今回、省かせていただきます。
ここまで、表面意識、潜在意識、深層意識について説明してきました。
外から情報が入ってくると、表面意識でYES・NOの判断をして行動します。表面意識は、潜在意識の情報を持ってきて処理するところです。
表面意識は理性で、潜在意識は本能です。表面意識がなければ、人は本能むき出しになります。
例えば男性なら「やりたい、やりたい」となります。まずは、表面意識、潜在意識、深層意識があることを覚えていただいて、これから徐々に具体的な話をしていきます。
子どもに催眠はかからない
子どもは催眠術にはかかりません。なぜかというと、子どもはすでに催眠状態、トランス状態だからです。トランス状態とは催眠術にかかる状態ですが、子どもは最初から催眠状態なので催眠術にはかかりません。
催眠術にかかるようになるのは小学校3年生ぐらいからです。8歳から12歳の間に自我の境界線ができて、催眠術がかかるようになります。
自我の境界線とは、表面意識と潜在意識の間の線のことです。子どもは、表面意識がなく、自我の境界線がないので潜在意識がむき出しです。
人は、生まれたときには食欲と睡眠欲だけです。それにプラスアルファで生存欲があります。生存欲の中に食欲と睡眠欲があります。
最初は食べることと寝ることしか考えていない赤ちゃんが、例えばマー君と名前を呼ばれることによって「マー君=自分」だと認識します。
オギャーと泣くとご飯を食べさせてもらえる。暗くなると誰も相手をしてくれない。歩けるようになって階段から落ちてしまったら、ここから先は危険だ、痛いからここから先に行ってはいけない。
このように情報がどんどん入ってきます。潜在意識の中に長期記憶がどんどん蓄えられます。蓄えられることによって自我の境界線ができます。
自我の境界線ができることによって表面意識が出来上がります。表面意識がその人の性格です。
ゼロ歳児は、まだ性格が形成されていません。年を重ねるごとに情報を手に入れ、それによって徐々に性格が形成されます。
表面意識が性格です。性格とは、起きたことに対してどんな行動をするか、何を話すか。YES・NOの判断、または行動設定、状況判断の部分が性格になります。これは表面意識が決めます。
3歳児、5歳児になると徐々に性格が形成されますが、固定した性格は小学3年生ごろからです。
逆にいうと、小学3年生までなら、ある程度は性格改善ができます。人は、自我の境界線ができてしまうと悪いところが直しづらくなります。
なぜかというと、表面意識でYES・NOの判断をするので、情報がすべてはじかれてしまうからです。
意思と想像力
- 意思と想像力が戦うと必ず想像力が勝つ
- 表面意識が意思
- 潜在意識が想像力
催眠のセミナーや本で教えてもらったことですが、意思と想像力が戦うと必ず想像力が勝ちます。
これは私の人生の中でも大きな意味を持つ言葉です。表面意識が意思で、潜在意識が想像力です。
表面意識と潜在意識が戦うと1対9の割合で潜在意識が勝ちます。なぜ潜在意識が勝つかというと、表面意識自体が潜在意識の情報から出来上がっているので、優劣でいうと潜在意識のほうが強いからです。
潜在意識と想像力について詳しく説明します。
かぜをひいたら
- みんな優しい
- かぜをひくといいことが起きる
- 病弱なほうが得をする
例えば、自我の境界線ができる前、幼稚園のときに、かぜをひくと周りの人が優しくしてくれた。
いつもガミガミ怒っているお母さんが、「マー君、大丈夫? おかゆでも食べる?」お父さんも早く家に帰ってきてくれた。しかも、いつもはいじめる兄弟まで優しくしてくれた。
子供が、かぜをひくと良いことが起こると思ったとします。そうすると、自我の境界線ができる前に、病弱なほうが得をすると潜在意識にインプットされてしまいます。そのまま大人になると病弱な体になります。
表面意識では健康なほうがいいことはわかっています。健康であれば、どこにでも遊びに行けるし、仕事もできるし、何でもできます。
でも、子供の頃に、病気をすると良いことが起こるという記憶が潜在意識の奥に芽生えるので、病弱な体になります。
大人になってからであれば、周りの人間が優しいのは病気だからだと理解できます。子供は、表面意識がないので、そのまま情報をストレートに受けてしまいます。
これが自我の境界線、表面意識と潜在意識の違いです。
あっちに行ってなさい
- 静かにしていたら褒められた
- おとなしくしていたほうが得
- 目立たないほうがいい
例えば、「あっちに行ってなさい」とお母さんに言われたとします。
静かにしていると、お母さんに「今日は良い子にしていたね。おとなしくしていたね」と褒められて、アメをもらったとします。そうすると子供は、おとなしくしていたほうが得だと思ってしまいます。
潜在意識の中に、おとなしくしていたほうが得だ、目立たないほうがいいというプログラミングが出来上がってしまうと、大人になってから目立つ行為ができなくなります。
例えば、社長になるために重大な会議があったとします。そこで良いプレゼンができれば社長になれます。ところが、その日の朝におなかが痛くなります。
表面意識では社長になりたいという意思がありますが、潜在意識に目立たない方がいいとインプットされているので、潜在意識でおなかが痛くなります。意思と想像力が戦うと必ず想像力が勝ちます。
生まなければよかった
- 必要のない存在
- 消えたほうがいい
- 自殺願望
これが一番最悪ですが、「あなたなんか産まなければよかった」と子供に言ったとします。
僕は必要のない存在だ、消えたほうがいいという情報がインプットされた状態で大人になると、自殺願望が働きます
自我の境界線ができる前の教育は非常に大切です。三つ子の魂百までとはよく言ったものです。
自我の境界線ができる前は、YES・NOの判断が正しくできないので、言われたことをそのまま記憶してしまいます。
次の記事では、「トランス状態」について説明します。