「自己完結型人間」という言葉は、どうも悪いニュアンスで使われがちなようです。
身近な人が「自己完結型」であることで悩んだり、自分がそうだと言われてへこんだりした方も多いのではないでしょうか。
「自己完結」という言葉自体は、「それ一つで充分」「他と繋がっていない」という意味です。機械やシステムの「自己完結型」は単に独立して機能するというもので、文脈によっては「これ1つでOK」というスグレモノを指す場合もあります。
しかしこれが人間に使われる場合、「自己完結」は多くの文脈でネガティブな意味になってしまいます。「自分ひとりでOK」が、「他人とつながれない」という欠点になってしまうからです。また、実際に人間社会では不都合なことも多いのは事実です。
しかし「自己完結型人間」に共通の性質は、良いほうにも機能します。「自己完結型人間」のメリット、デメリットあげながら、特徴をご紹介します。
自己完結型人間の特徴
たんに「他人とつながれない」というと、「内気な人」を連想します。しかし自己完結型の人は内気なのでしょうか?
「内気な人」と「自己完結型人間」の特徴は、一部は重なるものの、一部はまったく違います。一番大きな違いは、内気な人の多くが「他人とつながりたいのにつながる勇気がない」と不安を感じているのに対し、自己完結型の人は「一人ですごすことに満足している」ことです。
ですから、「自己完結型人間」はインドアタイプとは限りません。むしろ一人で世界旅行をするような大胆さを持っていることも多いのです。
以下に、「自己完結型人間」の特徴とされるそれぞれの性質を、良い側面と悪い側面の二つのとらえ方で見ていきます。
自分ひとりで決められる=人の意見を聞かない
自己完結型の人は、ものごとを決断したりやり遂げたりするのに、他人に頼る必要を感じません。もっとも、ただ頭のなかで考えて決断をするわけではなく、本やインターネットを通じて充分なリサーチを行います。
「人に直接聞く」ということが少ないだけです。これは一人でする仕事の場合にはむしろ不可欠な能力で、立場や職種によっては有能さとみなされます。
しかし、組織のなかでチームワークが求められる場合、情報を共有したり相談したりせずに、単独行動をとることにつながります。人がいろいろな意見を言っても、それによって自説が揺らぐことはほとんどありません。
それは根拠のない自信ではなく、充分なリサーチをしたあとで納得しているからです。ですからよほどの反証でないかぎりは意見を翻すことがなく、とくに「この人の言うことだから」と情で人の意見を聞くことはほとんどありません。
一面では「流されない」「ブレない」とも言えますが、場合によっては大切なものを見逃して失敗することもあります。日本の組織のなかでは、チームワークを乱すとみなされることが多いでしょう。
一人ですごすのが幸せ=結婚願望がない?
数年前に、あるテレビ番組が「家事ができて女性を必要としない男性」を「自己完結型人間」と定義し、話題となったことがありました。
自分ひとりで満足なので結婚をとくには望まず、かつパートナーがいる場合にも自分流を曲げないことが衝突を招き、しかも本人がそれを意に介していない……というのが「許せない」という女性の意見が多くあったようです。
しかし、じつはこの特性を持つのは男性に限りません。女性も男性も、「結婚をしなくても生きていける」という選択肢が増えたからこそ表に出やすくなった性質といえます。
女性の場合、一昔前ならば、一生を独身で過ごせるのは莫大な遺産などがある場合だけだったはずです。男性にしても、ある年齢になれば結婚することが自然であり、義務とされたことも多かったでしょう。
「家事ができる自己完結型人間の男性」が話題となった背景には、「家事は女性の領分」「生涯を独身で過ごすのはよくないこと」という考え方への反応があります。
それが良いか悪いかという判断はさまざまですが、この切り口が多くの人の関心を引いたこと自体が、案外大きな価値観の変化や、人の生き方の多様化を示しているかもしれません。
好きなことに没入する=殻にこもっている
自己完結型の人は、関心のあるものには高い集中力を示します。ほかのものが目に入らなくなるほどです。
こういうときはピーク・パフォーマンスの状態にあり、多くの場合、非常に高い満足感も得ています。ですが、その期間は外から見ると「こもっている」ことになります。
悪意がない=鈍感
外から見ると、さまざまな場面で他人の感情を傷つけることもある「自己完結型」。ですが多くの場合本人には悪意がなく、意識して人を傷つけることなど思いもしません。
むしろ人から「あなたは自己完結している」と指摘されて、気に病むこともあります。しかし同時に、「誰にも迷惑をかけなければ自由にしていいはずだ」という考え方も持っています。
「人は他人となるべく多く関わるべきだ」という考えの人から見ると、「迷惑はかけない」という態度自体が問題になるのですが、本人はそうは考えず、非常に鈍感で腹立たしい人物、と見られることにつながります。
プラスとマイナス両面を見る
人間の性質はプラス面とマイナス面両方からとらえることができますが、「自己完結型人間」が問題となるのは、おもにコミュニケーションやチームワークが必要とされる場面のようです。
人の気質はいろいろですし、他人がつねに正解でないのも事実です。それでも、自分が「自己完結型」に当てはまると思われた方の中には、不都合な部分を改めたいと考える方も多いと思います。
社会生活を円滑に行うためには、人とのつながりが欠かせません。「人の意見に耳を傾けることには、人間関係をスムーズにするはたらきがある」、という大きな視点でとらえると、そうすることに興味を持つ助けになるかもしれません。
自己完結型の人は話し合いを苦手とすることが多いですが、同時に興味さえ持てば実行できるという長所も持っているのです。
人との対話能力は一生の宝になりえます。また、ある意味で「一人でできる能力」自体が周囲の反感を買うこともありますが、それはあなたの長所でもあります。発揮しやすい環境を作る前向きな努力をしてみましょう。
一方で、仕事仲間などに「自己完結型人間」がいるという場合、とくにリーダーとしてまとめなければならない立場のときは、どう彼らを取り込むかが問題になると思います。
その場合は情の部分ではなく、客観的なデータなど理詰めの話題で協力をうながすと、輪に引き込みやすくなるでしょう。自己完結型の人の多くにとって、客観的な論点は受け入れやすいことが多いからです。さまざまな性格のそれぞれの長所を生かしながら、最高の結果を出す道を探ってみてください。