アドレナリンと聞くと危機的状況に陥った時やトップクラスのスポーツ選手など特殊な状況で分泌されるもので、一般人の日常生活にはあまり縁のない物質のように感じられるかも知れません。
しかし、日常的なストレスによってもアドレナリンは分泌され、社会問題にもなっているうつ病発症の大きな原因となる可能性があるのです。
アドレナリンとは
誤解している人が多いかもしれませんが、アドレナリンは神経や脳神経系に働く神経伝達物質ですが、脳から分泌されるわけではありません。アドレナリンは腎臓の隣にある副腎髄質より分泌されます。
人の体には「自律神経」という、意思とは関係なく自然と働く機能が備わっています。
本人が意識しなくても動く、呼吸や血流、内蔵の働きといった生命維持のための働きをコントロールしています。
自律神経には、以下の2種類があります。
- 緊張状態のときや興奮したときに活性化する「交感神経」
- リラックスしているときに活性化する「副交感神経」
アドレナリンは「交感神経」が活性化されたときに分泌されストレス反応の中心的役割を担います。
アドレナリンが分泌されると、脳の働きや身体的パフォーマンスが一時的に上がり、外敵と戦う、危険から逃げる、といった行動を助ける働きをします。
逆に「副交感神経」が活性化したときに分泌される代表的なものとして「セロトニン」という物質があります。こちらは精神を安定させ、生体リズムを整え、睡眠や体温調整を助ける働きがあります。
アドレナリンはどんなときに分泌される?
ではどんなときにアドレナリンが分泌されるのでしょう?
主に以下の様なときにアドレナリンが分泌されます。
- 生命の危険や恐怖、不安などを感じたとき
- 緊張状態やストレスにさらされたとき
- 怒りや興奮状態にあるとき
- 悲しんでいるとき
- 運動をしているとき
- お腹が減っているとき
外部から大きな負荷がかかったときに身を守るためにアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンの効果
アドレナリンには以下の様な作用があります。
- 血圧の上昇
- 心拍数の増加
- 心、肝、骨格筋の血管の拡張
- 皮膚、粘膜の末梢血管の収縮
- 血糖値を上げる作用
- 瞳孔を開く
- 気管を拡張
上記の効果から強心剤・止血剤・喘息(ぜんそく)鎮静剤などの薬に利用されています。
心拍数や血圧を上げるため、脳内の酸素の増加による注意力の向上や筋肉中の血流の増加による一時的な身体能力のアップなどが起こります。※いわゆる火事場の馬鹿力といわれるものです
スポーツ選手がプレー中に大声を出したり、大きな動作で感情を表したりするのは、疑似的に緊張・興奮状態を作り出し、アドレナリンによってパフォーマンスを向上しようとしているのです。
アドレナリンがうつ病を引き起こすメカニズム(アドレナリンの副作用)
前述の様にストレスにさらされるとアドレナリンが分泌されます。これは仕事や人間関係などの日常的なストレスでも起こります。
通常アドレナリンは危機的状況を回避するため、一時的に交感神経優位の状態を作り出すものです。
しかし、日常的に強いストレスを受け続けると、血中にアドレナリンが増え、交感神経優位の状態が続く様になります。
すると、常に興奮している様な状態になり、不眠などの障害がおこりうつ症状などに陥りやすくなります。
アドレナリンをコントロールし、うつ病を防ぐには?
アドレナリンをコントロールする方法はいくつかあります。
そのひとつが副交感神経系ホルモンであるセロトニンを分泌させることによってアドレナリンの分泌を抑え、ストレスを軽減させる方法です。
セロトニンを増やす方法としては以下の様なものがあります。
- 規則正しい、朝型の生活
- 太陽光をしっかり浴びる
- リズム運動を行う
- よく噛んで食べる
- 家族や親しい友人とのコミュニケーション
- 好きな音楽などを聴いてリラックスする時間を持つ
もうひとつの方法が運動をすることです。
この場合の運動はワクワクするようなもので、かつ過度の興奮はしないもの(スカイダイビングなどの過度の興奮状態になるものは避けましょう)、そしてある程度の筋肉負荷がかかるものがよいでしょう。
強い運動によってアドレナリンが出たあと、運動が終わるとアドレナリンを抑える物質が分泌され、気持ちよくリラックスすることができます。
アドレナリンは日本人が発見した!
あまり知られていませんが、アドレナリンを発見したのは日本人の研究者高峰譲吉とその助手の上中啓三という二人です。
アメリカのエイベルという研究者が先に発見したとしてエピネフリンという名前を付けましたが、その後エイベルの実施した方法ではアドレナリンが抽出できないことが分かり、高峰譲吉と上中啓三が正式な発見者と認められました。
アメリカではエイベルの主張を支持し今でもエピネフリンと呼ばれています。
