人前に出るときや初対面の人と会うとき、緊張してうまく話せないことはありませんか?
人間は不安や緊張を感じるとからだが硬直し、相互作用で心を緊張させますので、心を安定させるためにはまずからだをリラックスさせることが大切です。
この訓練として近年大きな注目を浴びているのが自律訓練法で、自己暗示・自己催眠の方法のひとつとして世界中で用いられています。
この方法は心とからだが密接につながっていることを応用した手法で、筋肉や血管をリラックスさせることで心身のバランスを安定させることができます。
一般的な自律訓練法は6つの公式で構成され、ストレス緩和や疲労回復、集中力の回復などさまざまな効果を期待することができます。
今回は、この自律訓練法使って効果的にセルフコントロールする7つのステップをご紹介しましょう。
背景公式「気持ちが落ち着いている」
自律訓練法で確かな効果を得るためには、訓練の基本となる背景公式を知ることが大切です。
まずはからだを締め付けないゆったりした服装で、静かなで落ち着ける場所に腰を下ろしてください。この際には時計やアクセサリー、ベルト、ヘアゴムなどは一切外して、就寝前のような完全にリラックスした状態を作りましょう。
音楽をかける場合はクラシックや自然の音など落ち着けるものを選び、草原にたたずんでいる自分を想像してください。
そして軽く目を閉じ、「落ち着いている、落ち着いている」と心の中で繰り返してください。何度も繰り返し唱えることで、自己暗示効果をもたらすことができます。
第1公式:四肢重感練習「手足の力が抜けている」
背景公式で気持ちが落ち着いたら、手足の力を抜いていきます。
まず右手から「右手の力が抜ける、抜ける」と心の中で繰り返していくと、右手からだんだんと力が抜けていくのが分かります。
右手の力が抜けたら右腕、右肘に移り、今度は左手も同様に行って、両腕の力が完全に抜けて重さを感じたら今度は肩の力を抜いてください。
肩が終わると、今度はおなか、腰、そして右膝、右足、右足の指先へと移り、左足も同様に行いましょう。
はじめは少し時間がかかりますが、重たさを感じるまで根気よく続けてください。
第2公式:四肢温感練習「手足が温かい」
第一公式で力が抜けたら、今度は同じ順序でからだを温めていきます。
まずは心の中で「右手が温かい」と唱え、温かさを感じたら徐々に部位をずらしていきます。このときは「温かい」と暗示をかける部分がお湯に浸かっていることをイメージし、全身の気をその部位に集中させてください。
「温かい」と繰り返し唱えることでからだに暗示がかかり、それによって血管が拡張して血流が良くなりますので、次第に体温が高くなっていきます。リラックスした状態では更に体温が高くなりやすいので、効果的に暗示をかけることができます。
第3公式:心臓調整練習「心臓が規則正しく打っている」
手足の重量感を感じ、温かさを感じたら、今度は意識を左胸に持っていきましょう。
左胸の内部にある心臓とその鼓動を全身で感じ、「気持ちが落ち着いている…手足の力が抜けている…手足が温かい…心臓が規則正しく打っている…心臓が静かに規則正しく打っている…」と、順番に6~7回ほど心の中で唱えてください。
リラックスした状態では心臓が穏やかに打ちますので、これを感じることで深いリラックス効果を得ることができます。ただし心臓に疾患のある人や心臓系の病気が気になる人は逆に緊張を高めてしまいますから、この公式は省略してください。
第4公式:呼吸調整練習「呼吸が楽だ」
第3公式で心臓の鼓動を深く感じたら、今度は意識を呼吸に向けてください。
四肢重感練習、四肢温感練習で重量感と温かみを感じていれば、この段階ですでに深いリラックス効果を感じられているはずです。「呼吸が楽だ、楽に呼吸している」と心の中で唱え、あるがままの状態で楽に呼吸をしてください。
リラックスをするための呼吸というと、ついつい深呼吸やゆっくり呼吸をしてしまいますが、呼吸調整練ではこうしたことを意識せずに自然のままの呼吸を繰り返してください。
ただし気管支喘息や過換気症候群、気管支に疾患のある人は緊張を高めてしまいますので、この公式は省略してください。
第5公式:腹部温感練習「お腹が温かい」
第2公式と同じ動作を、今度はお腹周りに集中させて行います。
胃~おへそ周辺に意識を集め、「お腹が温かい…気持ちが落ち着いている…手足の力が抜けている…手足が温かい…心臓が規則正しく打っている…呼吸が楽だ…お腹が温かい…」と、一連の動作を心の中で繰り返し唱えてください。
ただし胃や十二指腸潰瘍、胃炎、妊娠中の人は症状を悪化させたり妊娠中毒症を引き起こす場合がありますので、この公式は省略してください。
第6公式:額部涼感練習「額が心地よくて涼しい」
自立訓練法では、からだはリラックスして温まっていくのに対し、額は涼しくなっていきます。
やり方は一連の流れと同様に、額に意識を集中させて「気持ちが落ち着いている…手足の力が抜けている…手足が温かい…心臓が規則正しく打っている…呼吸が楽だ…お腹が温かい…額が心地よくて涼しい…」と心の中で繰り返してください。
ただし頭痛やてんかん、何らかの頭部疾患がある場合には緊張を高めてしまいますから、この公式は省略してください。
まとめ
自律訓練法の仕上げには必ず消去動作を行い、催眠の状態から目を覚ますようにしましょう。この動作を行わなければいつまでも催眠状態から抜けきれず、ボーっとした状態が続いてしまいます。
具体的な消去動作は、からだ全体で大きく伸びをする、首や肩をよく回すなどしてからだを動かすようにしましょう。
自律訓練法は、副作用がほとんどなく、効果的なリラクゼーション方法として知られています。これにより不安感やストレスから解放されるだけでなく、明るく前向きに過ごせるようになりますから、ぜひ試してみてください。