「行動力」とは、なにかを「実行する力」と言い換えることができます。頭の中だけで考えていたことを、現実の行動に移す、ということです。
人はなんらかの具体的な作業に手をつけると、自然にサイクルが回りだして前に進むことができます。一番むずかしかったり、おっくうだったりするのが「最初の一歩」でしょう。
ここでは、行動力が高い人が実践している、「最初の一歩」をラクにするヒントを、3つのステップに分けてご紹介します。
仕事でも私生活でも、大きなタスクでも小さなタスクでも、「最初の一歩」がおっくうだ、なかなか腰があがらない……というときに試してみてください。
実行のプロセスに慣れていくことで、自然と行動力が高まっていきます。
ゴールを書き出す
頭のなかだけで漠然と考えていると、ゴール、目的、手段の数々が混じりあって、「どこから手をつけたらいいかわからない」ことがよくあります。この混沌とした状態を扱いやすくするために、目に見える形にします。
まずは「めざすゴール=終わったときの状態」を以下の3点で書き出してみましょう。書き出すのは、いわば「自分で自分にツッコミを入れる」ためですので、完全でなくてかまいません。
- なにが
- どうなっている
- いつまでに(期限がある場合)
バラバラな単語しか浮かばない場合は、それでもかまいません。とにかく見える形にして、「こうじゃないな」と思ったらどんどん書き換えたり、たくさん書いてその中から選んだりしていきます。案外あいまいだった部分がわかったり、逆に「ここまでやればいい」という境界もはっきりします。
書き出すのは紙と鉛筆でも、パソコンでも、自分にとって手をつけやすい、心理的ハードルの低いものにしましょう。
ただしパソコンなどのデジタルツールの場合は、書き終わったら一度プリントアウトしてみることをおすすめします。というのは、人間の脳は、文字を紙から読むときと、ディスプレイから読むときでは反応の仕方が違うからです。
ディスプレイで読むときと比べ、紙から読むときは、前頭前野のはたらきが強くなります。前頭前野は、物事を客観的に見ることが得意です。
つまり、自分が書いたものに対しても、比較的「ツッコミ力」が高い状態になっているのです。文章や数字などを校正するとき、ディスプレイ上より紙にプリントしたほうが間違いに気づきやすいのは、経験からご存知の方も多いでしょう。
この「プリントアウト」というひと手間は、次の工程でも区切りのいいところで挟むと効果的です。ぜひ覚えておきましょう。
いっぽうデジタルツールには、書き換え・削除・単語の順番の入れ替えがカンタンにでき、慣れている人にとっては心理的ハードルが低いという利点があります。よりラクだと感じる方法で、まずは手をつけましょう。
ここができてしまえば、じつはもう「はじめの一歩」は済んでいます。ここまでで流れに乗れてしまう場合もあるでしょう。あとの二つは、実際の「行動」に結びつけるまでをよりラクにするヒントです。
「アクション」に分割する
書き出したゴールと現在の間を、ひとつひとつの「アクション」に分割します。
ぴったりな言葉でゴールを書き出せた場合、それを読んだとたんに、もういろいろな手段、必要なものなどが浮かんでくると思います。それをまた書き出していきます。
作業の順番どおりにイメージしてもいいですし、思いついたことをランダムに書き出してもかまいません。ただしこの段階で疑問点が出ても、すぐに調べ出さすに「?」をつけておいて、あとで調べるようにしましょう。
というのは、いろいろと書き出しているうちに、その作業が必要ないことに気づくかもしれないからです。
終わったら、ランダムに書いた場合はひとつひとつの「アクション」を順番に並べます。紙の場合は付箋などを利用するとよいでしょう。ここも完璧な作業表である必要はありません。
「始めてみなくては次の工程が決まらない」という場合もあるからです。そして一番最初のアクションを見て、もっと細かく分割できないかを確認します。
大きかったり抽象的だったりすると、腰をあげにくくなります。「○○さんに連絡をとる」より、「○○さん宛のメールを書く」「○○さんに電話する」「(番号を知らない場合)○○さんの電話番号が載っていた名刺を見る」のほうが具体的で、かつ小さなアクションになり、手をつけやすくなります。
自分に完璧さを求めない
義務感や緊張感を過度に持つと、やる気が萎えたり、タスクが実際以上に「たいへんなもの」に見えたりすることがあります。自分が緊張しすぎていると感じたら、ここでちょっとしたトリックを使いましょう。
自分に「90%の力でやろう」と言い聞かせるのです。
これはスポーツ選手のメンタル・トレーナー、ロバート・クリーガル氏が実践して効果を確認したことです。彼はあるとき、オリンピック最終予選に向けて短距離走選手たちを指導していました。タイムを見て、選手たちが緊張しすぎているのに気づいたクリーガル氏は、「90%の力で走れ」と指示しました。
すると、すべての選手が最初よりいいタイムを出し、一人は非公式の世界記録まで出したのです。力を抜きすぎない、しかし完璧でなくていいという、「90%」という指示が絶妙だったものと思われます。
何かに手をつける前から「100%の完璧な結果」を自分に課すと、緊張して身動きがとれなくなってしまうことがあります。
しかしいったん現実の行動を始めると、たいていタスクのとらえ方が変わるものですし、緊張を緩めることで本来の能力も発揮しやすくなります。
「案ずるより生むが易し」は使いふるされた言葉ですが、「自分には行動力がない」という人には、その最初の一歩に手をつけられないというケースが多いのです。最初から完璧である必要はありません。
もし途中に小さな失敗が起きたとしても、それは別の有効な方法を知ることにつながります。自分に試行錯誤の可能性を許してあげましょう。それなくして進歩はありません。
よけいな重荷を自分から下ろして、まずは「最初の一歩」に手をつけましょう。