人間関係の土台は、コミュニケーション、つまり「会話」によって成り立っています。
EメールやSMSなどインターネット上でのコミュニケーションツールの普及がいくら広がっても、より深い人間関係を築いていくには、Face to Faceの「会話」ではないでしょうか。
相手とのいい会話の積み重ねがよりよい人間関係を作ります。
しかし、「いい会話」を意識しすぎて空回りしてしまう人も少なくないのではないでしょうか?沈黙が続いたり、相手が会話を楽しんでいないことが分かると、自分の会話力に自信をなくしてしまうこともあるでしょう。
しかし、ちょっと思い出してください。
幼稚園や小学校の頃の自分はどうだったでしょうか?
友だちや家族と、大好きなテレビやキャラクターの話をしたり、最近の出来事、兄弟や友だちのこと、学校の話などたわいもないことを話していた頃は、次から次へと話が広がったはず。だからと言って、「上手く会話を展開していこう」というような意識はなかったのでないでしょうか。
大人になった今、「会話を上手くする」ということに意識しすぎるあまり、なんだか上手くいかない…。意識をしても無意識でも会話がうまくいかない・・・?
ではどうしたら会話術を磨くことができるのでしょうか?
会話の苦手な方へ、会話術を磨く3つのコツをご紹介しましょう。
「沈黙」がいい会話を生む!?
さっきまで楽しく話をしていたのに、ふと相手との会話が途切れ、沈黙の時間が流れるー。
なんだか気まずい雰囲気―。
そんな体験、誰もが何度も経験していることでしょう。でも、会話が苦手だと思っている人の多くは、この「沈黙」に対して恐怖心があるようです。
どんなに親しい間柄であっても、会話の最中に「沈黙」はやってきます。その時間を「恐怖」と捉えてしまうと、会話をすること自体が怖くなります。しかし、この沈黙の時間、実は「魔法の時間」です。
沈黙を怖がるがゆえに「次は何を話そう」と話題探しをしていると、頭の中はそのことでいっぱい。場合によっては相手の話が耳に入ってこないことも…。話を聞いていないと、余計に次の会話には繋がりません。
相手の話を聞きながら、次のテーマを探すより、貴重な「魔法の時間」を活用しましょう。
「何か話さなくては!」「次は何を話そう?」というようなストレスのかかった状態では、よけに焦ってしまい、うまく話せなくなるでしょう。
逆に、沈黙が訪れたときには、ゆっくり深呼吸をして会話の最中には見えていなかったまわりの景色などに目をむけることもおススメです。その日の天気や、相手の髪型や持ち物などにも少し目を向けてみると「そういえば・・・」とその時に適した話がふと浮かぶのです。
会話を盛り上げようと事前から話題を探しておくこともいいことですが、相手との会話の時間をより大切なものだと認識し、その時の空気を一緒に感じるようにすると、よりその場に適した話題が浮かんでくるでしょう。
想像力が会話術をつける?
会話術には「ことば」が重要だと思われがちですが、実は「想像力」も会話術を上げる重要なキーワード。
最初に書いたように、幼い頃は誰もが無意識に会話を楽しんでいた経験があります。子どものころにできていたなら、コツさえわかえば大人になった今もできるはず!
そのヒントとなるのか「想像力」です。
子どもの想像力はとても豊かで、絵本や一枚の絵から想像力を膨らませて、様々な想像の世界へ旅をします。
私たちも、人と会話をしているときにその「想像力」を使ってみてください。
相手が話していることを単に聞くだけでなく、相手の話を具体的なイメージとして自分の中で広げていってみてください。
「○○というレストランに行ったら、そこの料理がすばらしくて」というようなありふれた話題であったとしても、そのわずかな情報から、まずはレストランの内装や、料理の詳細などをイメージしてみるのです。具体的にイメージをしていくとその過程で、自然に自分から会話を広げていくことになるでしょう。
例えば、「そのお料理は辛いですか?」「結構、ボリュームがありますか?」「お店は静かでしたか?」などなど。
会話を上手くしよう、という目的ではなく、「想像力を使ってイメージする」という目的ですが、結果、話をしている相手は自分の話に興味を持ってくれていると感じ、よりスムーズに会話が展開していくでしょう。
子どもの頃のように、想像の翼を広げて、相手との会話も広げていけるでしょう。
会話術の習得に飛び級はない!?
さて、先にあげた2つのコツー
沈黙は魔法の時間であるということ、そして会話に必要なのは「想像力」であるということー。
この二つのことを少し頭に置いておきましょう。
一番最初に書いたように、私たちは「いい会話」「円滑な会話」を意識しすぎるあまり空回りしてしまうことがあります。
でも、無意識でも「いい会話」ができないのであれば、どうしたらいいのでしょうか?
3つ目のコツは、「学習段階」の存在を知ること!
私たちが物事を習得していくとき、その学習には必ず段階があります。これは「学習の5段階のレベル」と言われるものです。
レベル1から5を見てみましょう。
レベル1:無意識的無能
レベル2:意識的無能
レベル3:意識的有能
レベル4:無意識的有能
レベル5:無意識的有能に意識的有能
これだけ聞くと、なんとも難しく感じるかもしれませんが、実はとてもシンプルです。誰もが一度は経験している「自転車の練習」を思い出してみてください。
小さい頃の自分は「自転車」の存在さえしらないので、乗りたいなんて思ったことがない。これが「レベル1:無意識的無能」-意識がないから能力もない。
近所のお兄さんが自転車に乗っているのを見て、乗りたくなった!でも、まだ試したこともないので、乗ることはできない。「レベル2:意識的無能」―意識はあるけど、能力はない。
ついに練習を始めて少しずつ乗れるようになる。「レベル3:意識的有能」-意識すれば自転車に乗れる状態。でも、集中していないと転んでしまう…。
「レベル4:無意識的有能」―練習を重ねたことで、意識をしなくても無意識で自転車に乗れるようになった。
最終的な「レベル5:無意識的有能に意識的有能」は、無意識でも、意識的にでもその能力が発揮できるようになるというもの。自転車の乗り方は無意識でもこなせるし、意識的であっても載ることができるという、例えて言えば、次の人に教えることができる能力だと言えるでしょう。
さぁ、何かわかってきましたか?
自転車の運転も、語学学習も、料理も・・・
私たちが物事を習得し、無意識でもこなせるようになるには、段階があるということです。
「会話術」も同じですー。
沈黙が魔法の時間であるということも、想像力を使うことも、最初はすべてレベル1からスタートです。つまり、最初の段階は「いい会話」という存在さえしらないのですが、誰かの会話術を見たり、実際に自分が気持ちのいい会話を経験したことで、その存在を知り、自分も「会話がうまくなりたい」と意識し始めるということです。
その上で、まずは意識しながら習得していくのです。
つまり、最初に時点では、魔法の時間を意識し、想像力を使うことを意識するのですが、これは経験を重ねる内に自然と次のレベルへあがります。気がつくと、無意識でもその行動をとることができる状態になるということ。
そう、会話術のコツを知ったからといって、いきなり会話術が身に付くわけではないのです。
飛び級をせずに、意識と経験を重ねていくことが大切で、その積み重ねによって、無意識であっても能力が発揮できる「無意識の有能」になれるという事なのです。
何よりも気持ち!
会話術を磨く3つのコツをご紹介しました。
3つのコツ同様に重要なことは、何よりも「気持ち」です。
当たり前のことではありますが、会話は「相手」と「自分」の存在があって初めて成り立ちます。一方的なやり取りではなく、相互関係です。
会話の内容ばかりを気にするのではなく、目の前にいる相手との時間を貴重なものだと認識すると同時に、相手がいてくれることへの感謝も忘れないようにしましょう。言葉や態度には、気が付かない内に自分の気持ちが表れるものです。
相手との会話の時間を大切な時間だと思うと、相手が本当に話したいことが自然と出てくるものです。3つのコツを頭におきながら、相手への『気持ち』も大切にし、言葉ではなく態度でその感謝を伝えることができれば、必ずあなたの会話術はのびていくでしょう。