人の思考や行動には、潜在意識が強く影響しています。その影響度は、潜在意識が8割、顕在意識(表層的な今考えている自分の意識)が2割とも言われています。
暗示療法や自己催眠は、この潜在意識の力を利用して、精神的なトラブル(不安や恐怖など)を取り除いたり、なりたい自分に近づく(自信や能力向上、目的達成など)ことを手助けしたりすることを目的に行います。
このような催眠を使った能力向上や、またそのときに使う暗示文について詳しく見ていきましょう。
催眠による能力向上
催眠による能力向上としては、以下の様な効果を期待することができます。
- 目的達成(目的に向かうモチベーションの向上や行動の促進など)
- 本番に強くなる(集中力の向上やここぞというときのスイッチのON/OFFのコントーロールなど)
- 将来のビジョン(なりたい自分や自分の生きる意味を見出すなど)
- コミュニケーション能力の改善
- 内的自己啓発(自信やプラス思考、物事の捉え方や考え方への気付き、感情のコントロールなど)
- 心身のリラックス(不安や恐怖を取り除く、ストレスコントロールなど)
潜在意識を理解する
催眠を使った能力向上において、潜在意識が大きな役割を果たします。潜在意識を理解することで、大きな効果が期待できます。
逆に潜在意識を理解していなければ、効果的な能力向上は難しいでしょう。
潜在意識には以下の様な特徴があります。
①顕在意識が考えたことはすべて暗示として潜在意識に入る
潜在意識は、過去に体験したことや考えたこと・感情などの蓄積によって形成されます。そのため、顕在意識からの情報はすべて潜在意識に蓄積されます。
否定的な経験・感情を多く体験した人は潜在意識にもネガティブなイメージが多く蓄積され、逆に肯定的な経験・感情を多く体験した人は潜在意識にもポジティブなイメージが蓄積されます。
②潜在意識は否定形を理解できない
「赤いバラを想像しないでください」と言われたら、その人はおそらく赤いバラを想像してしまうでしょう。これと同じで潜在意識は「~しない」「~でない」といった否定形の表現を認識することができません。
むしろ否定しているものが情報としてインプットされかねません。
例えば、緊張してしまう状況で「緊張しない」と暗示をかけようとしてもむしろ緊張しやすくなってしまいます。この場合は「緊張しない」ではなく「リラックスする」「落ち着く」といった言葉に置き換えるのが良いでしょう。
③潜在意識は現実と想像を区別できない
潜在意識は実際に体験したことでなくても、顕在意識で感じた感情や思考であれば実際の体験と同様に蓄積します。
未来の出来事に対する想像によるプラスの感情やマイナスの感情も経験としてインプットされるのです。また、ホラー映画の様な架空のものをみて感じた恐怖なども、現実で感じた恐怖同様に蓄積されます。
暗示文11のルール
これらの潜在意識の特徴を踏まえた上で、暗示に使う言葉を作成するのですが、暗示文を作る上で押さえておかなければならないルールがいくつか存在します。
暗示文作成のルールを紹介しましょう。
暗示文のルール1:一人称にする
暗示によって他人や周囲の環境を直接変えることはできません。
暗示文は一人称にしましょう。
暗示文のルール2:肯定的な表現にする
前述の通り、潜在意識は否定的な表現を理解できません。
マイナスの効果になりかねないので、肯定的な表現を使うようにしましょう。
暗示文のルール3:現在形を使う
「したい」などの未来形ではなく、「である」「している」といった現在形または現在進行形を使いましょう。
暗示文のルール4:過去の悪い出来事には触れない
否定的な表現同様、マイナスの効果になりかねないので、ネガティブな要素には触れないようにしましょう。
暗示文のルール5:できるだけ詳しく細かく
曖昧な表現を使うと、実現したいものをイメージしづらくなりますし、そこに向かう過程もイメージしにくくなります。
なるべく詳細に具体的に表現するようにしましょう。
暗示文のルール6:現実的な内容にする
実現不可能な完璧すぎる目標は自分を苦しめるだけです。
実現可能な現実的なものを目標としましょう。
暗示文のルール7:能力についてではなく具体的な行動を言葉にする
現実的なイメージを持ち、行動につなげていくことがポイントです。
能力についてではなく、具体的な行動を言葉にしましょう。
暗示文のルール8:想像力を働かせる
目標を達成した後やその過程をイメージすることはとても重要です。
暗示文を作るときには、想像力を働かせて、イメージを作りやすい言葉を選びましょう。
暗示文のルール9:一つの文章には一つの意味で
潜在意識にインプットするためには、現在の思考(顕在意識)を一点に集中することが重要です。
一つの暗示文に複数の意味や目標を含めるのは、意識を分散することになり、効果を低下させてしまいます。
一つの暗示文の意味・目的は必ず一つにしましょう。
暗示文のルール10:誰が聞いても支障がない表現にする
仮に自己催眠が残り続けてたとしても問題無いような表現を使いましょう。
暗示文のルール11:上手な文章を書こうとしない
もちろん文章が上手な人は、上手な文章を書いても構いませんが、暗示文の意味が自分に伝わることが重要なのであって、文章の上手い下手を気にする必要はありません。
思ったままの素直な言葉を使いましょう。
まとめ
最後に自己催眠を発見した、エミール・クーエの言葉を紹介しましょう。
“Everyday in every aspect, I’m getting better and better.”
「毎日あらゆる面において、私はどんどん良くなっている」
暗示文としてとても素晴らしい文と言えるでしょう。