心理カウンセリングの認知が広がっていくとともに、「催眠」というものへの理解も広まってきた一方で、テレビ番組などでみるシヨー催眠のイメージが強い人もまだまだ多いのではないでしょうか。
あなたはだんだん眠くなる…
次に目覚めたときには犬になっています…
というような、エンターテイメント性が高い催眠術です。そのため、日本では、催眠術=怪しい・危ない、というイメージもまだまだあるかもしれません。
そもそも、催眠をかけて相手を犬にさせたり、特定の言葉に反応させたり、もしくは特定の数字だけ言えなくなったりすることに何の意味もないのですが…。
一方、心理カウンセリングで用いられる催眠療法といわれているものは、幼少期に戻るなどの退行催眠をはじめとするもので、トラウマや辛い過去からの解放などを目的としたものです。
催眠の目的は「望ましい変化を促すために、無意識に働きかけること」です。この本来の目的をきちんと理解することが大切です。
さて、そんな「催眠」の中には「瞬間催眠」と言われるものがあります。文字通り、クライアントを一瞬で催眠状態へ導くことができるというもの。
その方法をアメリカのWikihowというハウツーサイトからご紹介します。
瞬間催眠の導入の方法
瞬間催眠の方法はいくつかあります。クライアントが催眠状態に入った後は、通常の催眠療法と同様の流れになるので、ここでは、瞬間催眠の導入をご紹介します。
いくつかある瞬間催眠の導入方法の中から、よく使われている手法の一つ、Arm Drop Induction(アームドロップ・インダクション)と呼ばれるものをご紹介します。
ステップは次の6つー
- 椅子に座わってもらう
- 催眠について説明をする
- カウンセラーの手のひらに、クライアントの手を重ねる
- カウンセラーの額に集中すると同時に、重ねている手を押し下げるようにする
- 瞬時にクライアントの集中をそらす
- トランス状態(催眠状態)に入る
①から順に詳しく見ていきましょう。
①椅子に座ってもらう
これから催眠をかけるクライアントに椅子に座ってもらいます。座り心地の良いように、座ってもらいましょう。
高さのある椅子で足がぶらぶらとして落ち着かなかったり、背もたれがなく、ゆったりと座れないイスだと、その座り心地の悪さに神経が集中してしまい、催眠導入の妨げになります。
②催眠について説明をする
クライアントが、これから始める催眠に対して不安感を持っている場合、催眠導入は上手くいきません。
催眠療法に限らず、すべてのカウンセリングはカウンセラーとクライアントとの間にラポール(信頼関係)ができていないと、カウンセリングがうまく進みません。
そのため、これから始める催眠療法は安全であること、あなたを傷つけたりすることはないということ、また催眠をする目的をきちんと伝えることが大切になります。
③カウンセラーの手のひらに、クライアントの手を重ねる
カウンセラーは手のひらを上に向けた状態で、クライアントの前に手を出します。
クライアントには、カウンセラーの手のひらの上に、自分の手のひらを重ねるように指示します。
④カウンセラーの額に集中すると同時に、重ねている手を押し下げるようにする
クライアントに、カウンセラーの額の当りを見て、そこに集中するように指示します。同時に先ほど重ねた手を押し下げるように指示します。
逆にカウンセラーは、手を下から押し上げるようにし、クライアントの下に押し下げる力をきちんと支えるようにします。
⑤瞬時にクライアントの集中をそらす
手元と額への集中をそらすために、瞬時に行います。クライアントには、自分の名前を逆さから言うように指示したり、簡単な童謡などを歌ってもらうように指示します。
その間に次の3つの事を瞬時に行います。
1.重ねている手から自分の手をスムーズに引き抜く
2.眠れ!(もしくは「はい!」というようなきっかけとなる言葉)と大きな声でいう
3.クライアントの身体をそっと後ろに倒すように軽く突き、手のひらで肩を押す
突然トランスに入るため、クライアントが頭や体をどこかにぶつけないように最大限の注意が必要です。
特に頭は重く、意識がなくなった状態ではクライアント本人が支えられなくなるため、頭に注意し、しっかりと支えてあげる必要があります。
⑥ トランス状態に入る
これでクライアントは催眠状態に入ります。
催眠術の解き方
催眠状態をとく際には、他の催眠療法同様に、ゆっくりと意識を戻すように誘導します。
例えば、「あなたは、これからゆっくりとこちらに戻ってきます。気持ちはとてもリラックスしていて、いい気分です。私がこれから10数えると、あなたは目が覚めます。目が覚めるとあなたはとてもリラックスした状態になります。」
というような誘導とともに、ゆっくりと数字を数え、意識を戻すよう促します。
まとめ
瞬間催眠の導入方法は一見簡単そうです。
特に特殊な能力がなくとも挑戦できそうな印象がありますが、やはり遊び半分で試してみることはおススメできません。
それだけ危険なことでもあると同時に、遊び半分では相手とのラポールを築くことも難しく、結果的にうまく誘導できないことが想像できます。
最初に書いたように、催眠療法の目的をきちんと理解し行うことが大切です。
催眠は変性意識、トランスというような言い方もします。意識と無意識の中間にある状態で、何か考え事をしてぼーっとしていたり、睡眠に入る直前のうとうとしたような状態も催眠状態に近いものです。
催眠状態にあるとき、私たちの意識はふわふわとした状態で、受動的です。あまり批判的に物をと捉えず、広い心で物事を受け入れられるようになります。そのため、カウンセラーの言うことを素直に聞くことができるのです。
一見誰にでもできそうな瞬間催眠術。
そのため、催眠によってどのような方向へ導くのか、クライアントはどの状態を望んでいるのかを明確にして行うことが瞬間催眠の成功の秘訣になりそうです。