このような経験はありませんか?
あなたが何か失敗をおかして、しずんだ気持ちでいる時、親兄弟がやけに元気が良く、無性に腹が立ってテーブル等を思いっきり叩いてその部屋を出ていってしまった。
どうですか。誰しも似たような経験があるはずです。
何故なら、人間は同調を求める生き物だからです。ですから自分の気持と合わないと気分が悪くなるのです。この原理をペーシングといいます。
相手に同調する
同調されると相手に理解されたと多くの人が感じます。この事を利用して相手の話すスピード、呼吸などを意識して合わせて行くことをペーシングといいます。
ペーシングは相手とのコミュニケーションを円滑に行うための技術です。コミュニケーションというのは一方向では成り立ちません。
ですから、相互理解をする必要があります。つまり、相手に聞く耳を持たせるということです。
この事で言うと、特にペーシングが有効であるのは相手が怒っている時です。相手が怒っているときというのは、当然ながら人の話を聞くような体勢にはなっていません。
一方的に早い口調で、自分の意見をまくし立てることが多いでしょう。
このような場合、良く見かける光景としては、相手落ち着かせようと、逆にゆったりのペースで「まあまあ」等とやりがちです。
しかし、これは、全くもって逆効果といえます。相手は、自分と真逆のペースのあなたに対して、自分の怒りが理解されないと感じて「あなたでは、話にならない。」と言い出す可能性も多いにあります。
もちろん、このままでは問題の解決に成りません。あなたに課せられた使命は相手の不満のもとを聞く事なのです。
相手が緊急重大だと思っていることは、あなたも緊急重大にうけとめるべきなのです。
ペーシングで相手から情報を取る
例えばクレーム対応の場合「この前買ったこれ。もう壊れた。不良品じゃないのか?」と相手が怒ってきた場合、正解の対応としては、即座に相手のテンションに合わせて「たいへん申し訳ございません。」とあやまることです。
なぜなら、相手は自分のもたらしたニュースがあなたにとってどれだけ関心があるかを瞬時に見極めるからです。
相手が気の長い大人であれば、最初に不快だったとしても、故障の現象がどのような物か話そうとするでしょう。
しかし、心のどこかで、あなたが自分のもたらすニュースに関心がないと思っているので、同調してくれた相手に話すことよりも限られた情報を伝えることになります。
そして、情況を確認し、例えば相手の思い違いであったということが判明し、相手にそれを伝えると、今度は「そんなの聞いていない」と言い出してしまうのです。
このような行き違いは何が原因なのでしょうか。
リーディングで相手に気づかせる
考えられる原因としては、初めからペーシングされてないままに、会話が進行していたのでお互いの思いが掛け違ってしまった事がひとつ。
そして、せっかくペーシングで相手に安心感を与え、相手から必要な情報を引き出したのに、相手が話を聞ける状態までもって行かなかったという事が一つです。
前者はペーシング不足による相手への理解がたりないという事で、そもそも問題外なのですが、後者に至ってはペーシングによる同調があったにも関わらず、相手の機嫌をそこねてしまったのです。
これは、相手の怒りの感情をコントロールするリーディングが行われていなかったからです。リーディングは相手の感情をこちらの意図した方向に持っていく事です。
怒りは4分半
お客さんからのクレームにきちんとペーシングで対応すると、ある程度、お客さんの怒りがおさまってきます。
人が一つの事に対して怒っていられるピークの時間は4分30秒という「4分半の法則」というのがあります。この間はひたすら相手の聞き役に徹しなければなりません。状況にあった相槌は立派なペーシングです。
この法則にのっとり、相手が落ち着いた頃合いをみて、今まで得た情報から解決策を考えるように、あなたが相手をリードしていくのです。
この行為こそが相手が物を聞く体制にするという事なのです。
つまり、お客さんのクレームがお客さんの取り扱い違いだったことを、指摘するのではなく、お客さんに気づいてもらう様に仕向けるのです。
その為には、怒りの段階から一緒に考える段階へギアチェンジをする必要があります。その為にはペーシングで相手に信用をされている事が絶対条件となります。
そして、相手の思考がおさまった事を見計らう観察力が必要です。いうなれば、リーディングをする為に今までペーシングを行ってきたという事なのです。
まとめ
ペーシングは相手の感情にそって、話すスピードや呼吸、しぐさをあわせていく事です。その事により、お互いに相手への親近感がわいてきます。
それは、相手にとってはあなたが自分の事に興味を抱いているという事を理解させる作業です。
その後、もし、相手の考えが間違っているのであれば、相手の思考が落ち着いた時にリズムを変えて、あなたの意見の方向にリードしていくリーディングがクレーム対応などに必要な事なのです。
もちろん場合によっては親近感を感じるペーシングだけで有効な場合もあります。