しきりにこちらを見ている異性がいて、「あれ、気があるのかな…?」と意識してしまう。それがじつは、自分を通り越して向こうにいる人を見ていたのがわかってがっかり……
ドラマや映画でもよく出てくる、ちょっと笑える勘違いです。目は顔のなかでも一番感情や心理が表れる部分です。
そのため、私たちは意識せずとも人の視線や目つきに敏感で、そこからいろいろなものを読み取ります。また無意識のうちに、自分の目でいろいろなメッセージを送っています。
目の動きは、その思考や感情が脳のどこで処理されるかとも関係があり、自分ではコントロールできないものもあります。
一方で、その効果を意識してなされることもあります。目の動きから読みとれるさまざまな心理を覗いてみましょう。
瞳孔の拡大
瞳孔は瞳に入る光の量を調節する部分で、暗いところではより多くの光を取り込もうとして広がります。瞳孔が広がるケースにはもうひとつあり、それが話している相手や話題に興味を持っているときです。
日本人の黒い目は瞳孔の状態を見分けにくいですが、光の状態によっては見やすいこともあります。瞳孔は意識して調節ができませんから、正直な気持ちが表れているといえます。
機会があったら観察してみましょう。もし話題を変えて瞳孔が広がったら、相手はその話題に興味を持っていることがわかります。
アイコンタクト
視線を合わせることは、瞳孔の拡大と同じように相手や話題に関心があることを表します。
興味のある話をしているときは、話している時間の80%は相手の顔を見ているという調査結果があります。ただ、じっと相手の目を見つめ続けるわけではなく、目から鼻や口、テーブルなどに視線を落とし、また戻るということを繰り返ています。
相手から視線を合わせられると、「相手は自分に関心がある」「相手は自分に好意を持っている」と感じやすくなります。しかし「関心」の理由はいろいろなものがあり、冒頭の勘違いの例のような場合もあります。
また、アイコンタクトは瞳孔の例とは違って、意識してすることもできます。セールスマンや故意に好意的な印象を与えようとしている相手は、テクニックとしてわざと視線を合わせてくることもあります。
同じアイコンタクトでも、視線を動かさずにじっと見つめ続けるアイコンタクトには、相手を威圧しようとする心理があります。見つめられるほうにとっても、これは心地悪く感じられます。
逆に目を合わせようとしない場合は、関心のなさ、拒絶、相手を嫌っていることを表します。
まばたき
平均的なまばたきの量は、1分間あたり6回から10回程度です。
これ以上のひんぱんなまばたきは、心理的に緊張していることを表します。たとえば会議で報告や発言をしなければならないときなど、緊張してまばたきが増える例はよく見受けられます。
また、話をしていて相手に関心があるときにも、まばたきは増えます。
日常的なまばたきの多さは、落ち着かなさや気の弱さを表します。ですが、逆に猪突猛進型の場合にも、自分にプレッシャーをかけたり、人に圧力をかけようとして緊張状態に陥りやすいため、まばたきが多くなることがあります。
視線の方向と脳のつながり
人は考え事をするときなどに、無意識に目を動かします。おもしろいことに、そのときどの方向に目を動かすかは決まっています。
人が記憶やイメージを思い描くときには脳の特定の領域が活性化するためで、このパターンはだいたい成人するまでに確定するといわれています。
どの領域がどの感覚と結びつくかには個人差がありますが、一般的に以下のパターンが多いとされています。
右: 未来の方向の時間感覚・未経験のものを想像でイメージする・考えを作り出す
左: 過去の方向の時間感覚・経験した記憶から再生する・思い出す
上: 視覚的なイメージ
下: 身体的な感覚・自分のなかの感覚
この視線⇔脳のつながりがあてはまる場合は、視線を向ける方向とそのときの状態の相関関係は、以下のようになります。
右上を見る: 視覚的なイメージを想像している。
右下を見る: 身体的な感覚を伴うことを想像している。
左上を見る: 視覚的な過去の記憶を思い出している。
左下を見る: 過去の記憶を探っている。または自分のなかで会話をしている。
真横に右を見る: 音を想像している。
真横に左を見る: 過去に聞いた音を思い出している。
このように、目線をどこかに動かしているときは、「今ここ」以外のものを想像したり、思い出したりしています。
自分で意識してみると、昔あったことを思い出すときにはこっち、聞いただけの場所を想像しようとしているときはあっち、というふうに、「なんとなく自然」に感じられる特定の方向がわかると思います。
相手に良い印象を与えるには
自分が相手に良い印象を与え、会話をスムーズにしたいときにも、これらのヒントを生かしましょう。
適切なアイコンタクトは、前述のとおり「関心を持っている」「話に身が入っている」というサインですから、「きちんと聞いています」という態度を表すことができます。
しかし、じっと見つめ続けると相手にプレッシャーをかけているように見えたり、なにか隠れた意図があるのでは、と疑いを抱かせます。
適宜視線をはずすことを瞬間的にはさみながら、細かいアイコンタクトをすると良いでしょう。
なお、目をいずれかの方向に動かすことは、先ほどご説明したとおり「今ここ」以外のことを考えていることを示します。ですので、「話に身が入っていない」「退屈している」というふうに見えることもあります。気をつけましょう。